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周期律と元素の性質

元素って、いっぱいありすぎて訳わかんないよなぁ。

そうだね。でも似たものも多いから、グループに分けて考えれば少しは区別しやすくなるかもね。

 

原子に含まれる電子の数は、多くの場合陽子数と同じであり、原子の性格・性質を決める大事な要因です。

原子核近くの殻に収容された電子は、エネルギー的に安定でおとなしい性質を持っています。
一方で、表面に存在している電子たちの活動は盛んであり、化学結合や化学反応に積極的に関わってきます。

今回は元素の性質を決める要因である価電子周期律について考えていきます。

周期律

それぞれの元素は、ほかの元素にはない特徴を持ちますが、性質が似ているものも多くあります。
とくに原子番号(陽子数)順に元素を並べると、似た特徴をもつ元素が周期的に巡ってくることがわかります。
周期律と呼ばれるこの規則性に古くから化学者は気づいていましたが、なかでも有名なのはメンデレーエフです。

メンデレーエフは原子量をベースに周期表を作ったわけですが、当時は発見されていなかったけれども「きっとこれくらいの原子量でこんな性質の元素があるはず!」という元素を予測し、その場所を空欄にして周期表を作りました。
後になって予測通りの性質を持った元素が発見され、空欄が埋められていくことによって、メンデレーエフの予見の正しさが証明されるとともに、周期表が完成して行きました。

periodic table

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』(https://ja.wikipedia.org/wiki/周期表)より

それでは元素の特徴は何で決まるのでしょうか?

価電子

元素は原子核に含まれる陽子の数で区別されていますが、元素の性質を特徴づけている1番の要因は最外殻の電子数と言えます。

最外殻は、電子が実際に収容されている電子殻のうち、もっとも数字の大きな電子殻のことで、炭素や窒素、酸素では2番目の電子殻(L殻)、ケイ素や硫黄、塩素では3番目の原子核(M殻)になります。

periodic table1-1

周期表では同じ横並びの周期に入るグループだね。

 

原子核から比較的離れた最外殻に収容されたこの電子のことを価電子と呼びますが、これら価電子が別の原子の価電子や軌道と相互作用することによって化学結合をつくります。
そのため、価電子の数や入ってる軌道が分子を形成していく上で大切になります。

単原子分子

分子の性質を調べていくと、だれとも化学結合を作らずに単体で存在することを好む原子がいます。
ヘリウムやネオン、アルゴンなどがこのグループに入っているわけですが、他の原子と結合を作りづらいというのは、単体でいることに満足している状態であり、化学的に安定であると言えます。

これら単原子分子の電子配置(電子の軌道への入り方図)を眺めると、電子が最外殻の軌道に丁度満室になったタイミングであることがわかります。

periodic table1-2

1s軌道が満室のヘリウムから、次のネオンまでは原子番号が8離れており、その間8コの電子が2s軌道と2p軌道を埋めていきます。
単原子分子として安定なネオンから次のアルゴンにたどり着く際も、8コの電子が3s軌道と3p軌道を満たしていくことになります。

オクテット則と元素の性質 

単原子分子以外の多くの原子にとっても、最外殻が電子で丁度満室になった状態が化学的に安定なことに変わりはありません。

たとえば酸素原子の場合、価電子数は6ですが、近くの単原子分子であるネオンを見習い、あと2コの電子を原子の周りに配置したいわけです。
仮に価電子1の水素原子2つと価電子を共有できれば、酸素原子の周りには価電子数が0(8コで満室になり、あまりの価電子は0)になりネオンと同じ価電子数とみなすことが出来ます。
水素原子側から見れば、酸素と価電子を1つ共有することで1s軌道が満たされ、ヘリウムと同じ電子配置をとれるため安定状態となります。
こうしてできたものが水分子H2Oであり、結果的に酸素は手(結合)を2本出していることになります。

オクテット則と呼ばれるのは、(有機化学で取り扱う)多くの原子にとって、周りの価電子数が0コ(8コ)の状態が安定であるというものです。
最外殻のs軌道やp軌道に空きスペースがあるよりも、ネオンやアルゴンを見習い軌道を満室にしていたほうが化学的に安定になるため、それぞれの最外殻に電子が8コ入るまで結合を作りたがる性質がある、ということです。

 

periodic table1-3


ちなみに、ヘリウムの最外殻(K殻)は電子が2コの状態が化学的に安定と言えます。

より安定な電子配置になるように原子同士が価電子を共有していき、できる結合を共有結合と呼びます。

ただし、ホウ素やアルミニウム化合物などでは、オクテット則を満たさない場合もたくさんあるから注意だよ!

 

まとめ

酸素は手が2つ、炭素は4つ、水素原子は1つなど、それぞれの元素が作りやすい結合の数は、価電子数やオクテット則など、外交的な電子と最外殻が安定な状態を求めて現れた元素の特徴のひとつです。反応性や化学的性質など似た特徴をもつ元素を把握する上でも、価電子の数に注目して整理した周期表は大いに役立ちます。